企業と地域をつなぐ新しい福利厚生施設
外観
40年以内に90%程度の確率で起こるとされている南海トラフ地震をはじめ、近い将来に災害が予想されている昨今において、行政機関と連携して災害対策に取り組む企業も出てきている。
太陽ホールディングス株式会社の子会社で、医薬品製造受託事業を担う太陽ファルマテック株式会社では、2022年11月24日に大阪府高槻市内にある本社敷地内に福利厚生施設を開設した。
前方に13m突き出した大きなひさし屋根が特徴的なこの施設は、社内公募によって「T-LINKS(ティーリンクス)」と名付けられた。
特徴的なひさし
地上3階建で総床面積約4,600m2を誇り、自然・地域・職場の環境に配慮された独創的な空間となっている。
建物全体を覆う庇屋根の奥行きは80メートル
設備の内容は、プロバドミントン選手で太陽ホールディングス所属の奥原希望選手が監修したアリーナ(体育館)をはじめ、次のとおり。
バドミントンコート3面分の広さをもつ、アリーナ
・レセプション
和紙を用いた特徴的なデザインは火災時に燃えにくい加工がされている
・マシンジム
・カフェテリア(食堂)
・浴室・社員更衣室(女性)
・会議室
・和室
・テラス・水耕栽培エリア
基本的には社員向けの福利厚生施設だが、災害発生時など有事の際は高槻市にとどまる帰宅困難者及び近隣住民の一時避難場所としての機能を持たせているのが特徴だ。(注:施設利用は高槻市・近隣自治会との協定に基づく方が対象)
「T-LINKS」は地震に強い構造や水害に対応する床レベルの設定、天井から落下物を抑えるため人が多く集まるところには直天井の採用など、避難場所として安心・安全に運用できる機能も十分に備えられている。
有事の際は施設の1階2階が主に解放され、被災者を200名程度(最大3日間)の収容が可能となり、高槻市内の民間施設では2番目級の収容数となる。(注:2022年11月21日現在)
太陽ファルマテック株式会社代表取締役社長 佐藤英志氏は、「T-LINKS」の開設についてこのように話す。
太陽ファルマテック株式会社代表取締役社長 佐藤英志氏
「この施設は、従業員が働きやすい環境の整備と、地域社会への調和を考えて建設されています。帰宅困難者が出た際に収容できる施設は何かという観点から、最終的に体育館にたどり着きました。体育館と食堂の組み合わせは、有事の際の避難所と考えた際に使い勝手が非常に良い施設です。また工場を併設している関係上、電気・ガス・水道のインフラは通常の家庭より強靭なものになっています。この施設をもって、有事の際も社員と地域の皆さまに安心して生活していただければと考えております。2018年の大阪府北部地震において最大震度6弱を記録した経験から、高槻市は災害に強い『強靭なまちづくり』を目指して取り組んできました。そのような取り組みに企業として貢献することで、地域からのフィードバックが得られ調和を図れるのではと考えております」
企業の福利厚生施設は、社員のみ利用できるクローズドの施設となることが大半となっている。しかしながら災害が身近に想定される昨今において、有事の際に解放される福利厚生施設が今後増えることは大いに考えられる。