デジタル地図などを提供するジオテクノロジーズ株式会社は2023年2月3日、東京大学空間情報科学研究センターと共同で、高精度な人流データを活用した研究を開始したことを発表しました。この記事では共同研究締結発表会の内容についてお届けします。
ジオテクノロジーズとは
「地球を喜びで満たそう」をミッションに掲げ、1994年にマルチメディアソフトウェア開発会社として創業し、1995年には「MapFan」の提供を開始しました。法人向けの地図データや位置情報ソリューションの提供はもとより、高度な自動運転の実現に不可欠な高精度3次元データ地図の提供も行うなど、日本の地図業界を牽引しています。
2020年「移動するだけでポイントが貯まるM2Eアプリ“トリマ”」をリリースし、累計ダウンロード数1200万を突破。(2023年1月現在) 一歩先を見据え、地球上のあらゆる事象を捉える技術革新と、既成概念を超えていく自由な発想で、未来予測のNo.1メタバースカンパニーを目指している企業です。
共同研究の背景
日本では2010年からスマートシティが4地域で始まり、現在1700のローカルガバメントがある中で2023年は51地域で実験をしている状況です。これからの都市分析の鍵となるのは”人”です。海外の例を挙げると、バルセロナでは日本で実施しようとしていることを、すでに2000年から行っていました。バルセロナの「スーパーブロック計画」では、市民が街の主人公になり、車道の使い方を決めることができます。
ジオテクノロジーズのデータは高精度で連続性があり、かつ人の属性も分かります。人の繋がりと連携したこれらのデータをどうやって地球のために使うかを考えていたときに、東京大学の柴崎教授との出会いがありました。スマートシティとは、安全、防災、健康、そして人々のための環境を実現していくことであり、ラストピースとして人々がこの中に入ることができれば、素晴らしいスマートシティが実現していくと考えています。
東京大学との共同研究について
東京大学の空間情報科学研究センターでは、時間や空間に関するデータや人の動きなどを扱っています。ほぼ全ての社会課題の解決において、人の動きを把握することが非常に重要です。2000年以前は、国勢調査といった数年に1回集計したデータしかありませんでしたが、2000年以降はモバイルデータを使い始めるようになりました。2011年の東日本大震災の際には、NHKの協力のもといくつかの会社から提供されたモバイルデータの分析を行いました。このようないわゆるビッグデータは全体の流れを分かりやすく示しますが、その一つ一つを細かく見ていくと、その人の生活ぶりを知ることができます。
今回の共同研究では、ヒューマンセントリックやスマートシティに向け、人々の活動を最適化していくための働きかけがポイントになってきます。そこで2022年3月〜5月のトリマのデータを用いて1都3県の184市区に居住する約110万人を対象とした人流データから、歩行者の移動距離を抽出し1人当たりの平均歩行距離を集計しました。その結果、平日、週末ともに神奈川県逗子市が1位となりました。逗子市は環境の良い住宅街ではありますが、都心に通うには少し遠いため、平日も休日もよく歩く結果になったと考えられます。また、東京23区は、平日はトップ20に入らないものの、週末になると一気に多くの区がランクインする結果となりました。首都圏では職住の距離が人々の歩行距離に影響を与えていることがデータから明らかになりました。今後は各地域についてより深いデータ分析を行い、その背景や理由を追究していきます。
今後の展望
共同研究の成果を社会へ還元し、そして具体的に実現するためには、まずはみなさんにこのような取り組みがあることを理解していただく必要があります。既にスマートシティへ動き始めている団体はもちろんのこと、これからスマートシティを研究し、住みやすい街づくりを目指している団体と一緒に取り組んでいきたいと思います。
今回の共同研究は、ウェルビーイングな街づくりに貢献し、地球を喜びで満たしていくものになります。ウェルビーイングな街になり人々が歩くようになると、CO2の排出量が少なくなるかもしれません。10年のスパンで考えたとき、これらの人流データを活用しより高度な未来予測をし、今後はありとあらゆる場面で貢献できることを目指します。最終的には地方自治体や学術研究の方々と一緒に研究しながら、良い街づくりをしていきたいと考えています。
わたしたちは無料でアプリを楽しむことができます。そしてそのデータが様々な研究に活かされることは、これからの循環型社会にピッタリではないでしょうか。ジオテクノロジーズと東京大学との共同研究によってわたしたちの生活がどう変わっていくのか、今後の展開がとても楽しみです。